改正被災マンション法をめぐる諸問題

趣旨説明


髙橋 悦子(マンション管理士)





1 はじめに
 2011年3月11日の東日本大震災発生から3年が経過した。震災当初は誰もが津波被害に目を奪われ、マンションの被害状況を口に出す環境ではなかった。
 時の経過とともに人々の関心も、生命、身体、水・食糧から次の段階の財産の問題へと変わっていった。なかでも住まいの問題は生活の基盤となるものであり、特に重要な部分である。
仙台市内で震災後に公費解体を選択したマンションは5棟であった。うち1棟は建替え決議によるものであり、昨年7月に建替えが完了した。もう1棟は以前から多数を所有していた法人が全部を所有することとなった。したがって実際に改正被災マンション法に則って敷地の売却を検討しているのは、3棟である。
 昨年、改正被災マンション法が成立し東日本大震災が政令指定され、5分の4の賛成で敷地が売却できることになり、関係者の間では大変に歓迎された。公費による解体はなんとか合意が得られたとしても、多数当事者であるがゆえに、敷地の処分にはさまざまな思惑がからむ事となり、民法による全員合意では到底、解決できなかったであろうと思われる。改正被災マンション法に則り、昨年12月8日にはHマンションで敷地の売却決議が終了した。
せっかく法律ができたのであるから、一部の心ない共有者のために敷地処分を断念することのないように、又、3年の時限の間に適正な敷地の売却ができるようにと願っている。
 現場の最前線で、実際に問題に直面し取り組んでいる東北支部会員と、折田泰宏氏にそれぞれの立場から論じていただき、改正被災マンション法をめぐる諸問題を明らかにしていきたい。
      
2 本分科会の構成
(1)「改正被災マンション法の概略と問題点」と題し、法制審議会委員を務めたマンション管理士の佐藤正芳氏から、論じていただく。
(2)「改正被災マンション法の法律上の問題点」と題し、弁護士の松澤陽明氏(東北支部副支部長)から論じていただく。
(3)「改正被災マンション法の実務上の問題点」と題し、実際に3棟のマンションの関係者と関わっているマンション管理士の萩原孝次氏から実務上の問題点を論じていただく。
(4)「大規模被災マンションの現況と改正被災マンション法の適用をめぐる諸問題」と題し、震災後に何度も現地に足を運ばれた折田泰宏氏に問題点を論じていただく。
(5)発表者と会場参加者による質疑応答

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